オス・・・

『 もしもし 越川君ですか?  外山です。 』

『 オスっっッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!! 』

突然の電話。 自然に背筋はピンと張った。 相変わらずの太く通るドスの利いた声。

いくつ歳を取ろうが条件反射的に 『 オス!! 』 という返事が出てしまった。

秋田商業高校、 学校に響き渡る日常の挨拶は 『 オス!! 』

さかのぼる事10年前、わたしは小さなショットバーを営んでいた。

『 越川 店出したって聞いたんだよ。  今近くで飲んでたから 迎えに来てくれるか? 』

先程振り出した雨。 私は店にあった2本の傘を持ち、迎えに走った。

『 相変わらず気が利いてるな。 あいにく傘を持ち合わせてなかったよ。 』

出てきた店から借りた傘を返し、 教え子が傘を持って来てくれたからと断りをいれると、

『 逢い合い傘でいいか。 』  と私の傘に入り、持参の1本はお連れの方に渡した。

ドキドキとした私の鼓動を悟られまいと平然を装うのが精一杯だった。

店に入ると 『 一緒に飲まないか。 せっかくだ、付き合ってくれ。 』

うれしかった。 25にもなる私だったが、先生の前ではあの頃に戻ってしまっていたのだ。

高校生の私を大人あつかいしてくれたような・・・、 うれしかった。

『 365日!!、365発!!、 いやぁ冗談なしによくぶっ叩きましたよ。 こいつはキャプテンでね・・・ 』

お連れの方に私を紹介した。 事実、相当厳しい先生でした。 よく叩かれました。

私のことでなくても、チームのことは主将である私のことであり、・・・よく叩かれました。

叩かれ、スタンド入口の階段から転げ落ち、皆の視界から消えたことも・・・。

公式戦の試合中にタッチラインに呼び出され、転げながらピッチに戻ったことも・・・。

ハーフタイムは毎度・・・。 キーンと耳鳴りがしたまま試合などした。

恨んだこともあった。 理不尽だと。  なぜ俺ばかりと。 悔しいことばかりだと。

 

『 あぁ 思いだした!! あの時の秋商の・・・ 』

お連れの方は東北高校の監督・大森先生でした。

小1時間ほど飲み、先生は会計を求めた。

『 あっ 越川、 釣りはいらねよ。  っなんて1回言ってみたかった。 ははは、かっこいいか? 』

『 とっとけ、  がんばって稼げよぉ  』  鷲の目と恐れられた先生の顔は、子供のような笑顔だった。

帰り際、 『 あっ ちょっとこい越川・・・ 』  と言うと 

『 一度 抱きしめてみたかった・・・   めんけぇなぁ・・・  』  私は先生の胸の中にいた。

たまらず、  ボロボロと・・・、  ボロボロと・・・。   

恨みなど・・・、 成しえなかった夢など・・・、  ボロボロと・・・、  ボロボロと・・・。

『 またな 』  ニコリと笑うと、先生はさっそうと振り返り、 店を出た。

賑やかな街のネオンに先生は歩き出した。

何か言わなくては・・・、 積年の恨みか? 感謝か?  詰まった思いはうまく言葉にならない・・・。 

私は、坊主頭にジャージを着たあの頃に時間が戻った。  

私は恥も外聞もなく 振り絞るように大きく叫んだ  『  おぉぉっっすっっっっっ!!!!! 』 

小さくなった先生の姿が立ち止まり、 少し振返りまたニコリと笑い手を上げ、 街の光の中へ歩いて消えた。

『 押忍 』  押し耐え忍びます、 先生。  これからどんなことがあっても。 押忍!!   

Published on 2010.04.16 at 12:41 by Sendai FC Staff

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