不老不死

中卒の父の豊富な知識や雑学は、本から学んだと聞いた。本は価値があると幼少の頃から教えられ、彼の部屋にはまさにジャンルも様々な本・本・本・・・。そんな彼の本と雑学からまつわるエピソードをご紹介。

私が小学校1年生の出来事でした・・・ある日彼がどこからか古書を見つけ、その中に不老不死の秘薬の作り方が書かれていると興奮した。表紙には『仙人』が描かれていて、非売品の秘伝の書だと豪語した。古代中国の唐僧が筑紫の国に伝え・・・・なんちゃらかんちゃら~ほにゃららかにゃらら・・・

梅核(殻を除いた梅の種子)と梅果肉と ○○○???を練り合わせて作るのだとか・・・その名は『梅雲丹(ばいうんたん)』古代千年ほにゃらら・・・朝晩寝る前に爪楊枝でちょっと舐めるだけでいいんだぞ!!それだけで健康!! 不老不死!! 作るぞ!! 梅雲丹!!(やっぱ、作るの・・・とんでもないプロジェクトに巻き込まれてしまった・・・)

かあぁさん!! 梅干を買って毎日食卓に置きなさい!!まずは種を集めるのだ!!(おぉ・・なんていうミッション・・・おれ梅干そんなに好きじゃないよ・・・) 毎日梅干。梅干。梅干。大きいの小さいの。すっぱいのしょっぱいの。梅干。梅干。梅干。(しょっぱいの食べ過ぎて・・・血圧上がって不健康・・・ってない?)

ひたすら食べた。『もうだいぶ集まったんじゃない?父さん』『まだだ。こんなんじゃ足りない。殻の中の実は小さいから、これじゃ練り合わせる量も取れない!!』(おれ、いたって健康・・どうせ、これは君が舐めるのだろう・・このミッション、果てが見えません・・・)

・・・三ヶ月はとうに過ぎた。梅干は習慣的になり、プロジェクトも頭からすっかり抜けていた・・・。時折ベランダを空けると食べ尽くしてきた梅干の種・種・種が干されて、小さな山が築かれていた・・・。(見なかったことにしよう・・・きっと忘れてるよ・・・友達にベランダ見られないようにしよ・・・) ・・・  ・・・  ・・・  ・・・。

よくやった!!これだけあれば作れるぞ!!『梅雲丹』!!(ああ、季節は春から夏になっておりますよ・・・ミッションクリア・・・わーい・・・)ペンチを持てぃ!!殻の中の実を潰さないように取り出せぃ!!(マジかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!おれそんなに暇じゃねぇ!!誰食った種だ!!なんかやだぞ!!)『こうやって種を縦にしたら実が潰れないだろ』『 ハイっっ!! 』(・・・返事しちゃった・・・)ぱきっぱきっぱきっ『ばかやろう実を潰すなって』ぺしっ(打撃)!!『 ハイっっっ!! 』・・・  ・・・  ・・・  ・・・。

『ええ~ 皆協力して、よく食べました。秘薬、梅雲丹!!ここに出来ました!! 』(えぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!あんなに毎日食って!!あれだけかよ!!!! )『佃煮のり・ごはんですよ』の空き瓶に詰められた不老不死の秘薬を手に自慢気な彼。『家族皆で健康!!長生き!!まぁ おれは五十五歳で死ぬ予定だから!!あっはっは!! 』 

(保険は入ってる・・・いつでも死んでくれ・・・) 母より・・・
(憎まれっ子世に憚る・・・秘薬なしでもそうそう死なねぇよ・・・) 長男より・・・   
(父よ・・・あんた・・・幸せな人だな・・・バカにつける薬はねぇって知ってるか・・・) 次男より・・・

『爪楊枝にちょっとでいいんだからな!!ちょっとずつだぞ!!金掛かったからな!!』(確かに・・・、ここまでどれだけ梅干にお金を使ったのだろうか・・・不老不死・・・高価だな・・・)『ええ~ それではみんなで・・・』一同 『すっっっっっっっっっっっっぱあぁ!!!!!!!』『良薬 口にすっぱし!! ってかっ!!』 ( ・・・ 。  続かねぇな・・・。 )・・・  ・・・  ・・・  ・・・。

しばらくして、冷蔵庫の隅に忘れられた小さな小瓶・・・不老不死『梅雲ちゃん』を見つけた。蓋を空けると・・・梅雲ちゃんにはカビが生えていた・・・。『父さん・・・不老不死の秘薬にカビが生えているんですが・・・』『・・んだが捨てれ。カビ食ったら腹こわすぞ・・・』『・・・』・・・  ・・・  ・・・  ・・・。

先日、私と父と母は あるチラシに目がいった。『梅雲丹』 3,150円 (賞味期限六ヶ月)。不老不死・・売ってるよ・・・そんなに高くないね・・・作るより安いな・・・『ばかやろう あのとき作ったことに意味があるんだよ!!』どんな意味だ・・・どんな意味だ・・・

母『 そういえば・・・ 父さん五十五歳とっくに過ぎてるよ。タイムオーバー、早く死ね。』

Published on 2012.02.08 at 18:11 by Sendai FC Staff

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