ぎゃふん・・・その2

得失点差から引き分けではベスト4進出はできない。勝つこと。与えられたこと。それは勝つことのみ。  勝てば、クラブユース初のベスト4進出。6年目で歴史を変えることに・・・。表情は明るかった。いつもの強張った面持はなく、試合前とは思えない笑顔がこぼれていた。失うものは初めからない。いつも挑戦者なのだから。

互いを明るくさせようとふるまうその心の中は・・・本当は心臓が飛び出そうなくらいだったに違いない・・・急に上手にはならない。ただひたすらに頑張るだけ。運命のホイッスル・・・70分後、長いホイッスルが鳴り終えたとき。膝を着いているのか・・・歓喜に包まれ飛び跳ねているのか・・・

前半から互いのチームは激しいほどにぶつかり合う。身体のぶつかり合う音が、足と足が削り合う音が、味方を鼓舞する声が・・・そして・・・闘志を燃やす、命が燃え合っている様が、音を立てるように・・・序盤から、相手の業火を必死の闘志で押し返す展開は続いた。襲われながらも、自らの闘争本能が攻撃せよと身体を突き動かした。

赤い炎は真っ直ぐにゴールへと向かう。仙台FC先制。

一生懸命拾い、大事に繋ぎ、力強く運ぶ、そしてなだれ込むように身体ごとゴールに押し込む・・・天国と地獄、歓喜と落胆、運命は常にコインが目まぐるしく回転するように・・・一秒一秒、表と裏は一体に回り続け、彼らの体を精神を酷使させた。前半終了間際、自らの焦りからクリアミス。仙台FCムードメーカー・一希、オウンゴール。  絶望の闇が彼を襲う。あっという間に闇に蝕まれた未来は、彼の胸を締め付け涙がこぼれる。

『下手なのは鼻っから知ってんだよ。何も期待しちゃいねぇよ。ただ一希、お前は声があるだろうが。笑いも取れるじゃねぇか。おまえが盛り上げなきゃ、うちは暗くなるんだよ。ばーか』彼につね、私は強く言ってきた。『俺が落ちたらチームが暗くなる・・・声を出さなければ・・・』わかってはいるが、声が出ない・・・ 声が出ない・・涙が出る・・・不意に肩を叩く、『気にすんな!!カズキ!!想定内だっつうの!!切り替えろ!! 』

彼を救ったのはライバル・コータロー。2年前のド下手クソ玉拾いは、今ピッチに立っていた。いつも同じポジションで争い、いつもどちらかが試合に出ると、どちらかは外れる。キャラまでもかぶり、そしていつも小さなことで言い争う。試合に出たいが為、競い合い馬鹿にし合う。今日はそんなおっちょこちょいの二人がセンターバック。 でも、チーム1、2を争う元気な二人のセンターバック。 相手の気持ちは互いがよく分かっていた。1-1でベンチに戻ってきた選手の顔に曇りはなかった。

やれる。
相手は本当に強い。
でも、おれたちやれる。
やってやるさ。

今更、何を指示したところで何が変わるって訳ではないのだが、『北斗・・・ おまえキャプテンにしてホントによかったよ。おまえ性格随分変わったな。キャプテンだからみんなを助けたいって気持ちがプレーに表れてるよ。・・・仲間っていいだろ。でもな、お前がみんなを助けたいって守備に戻れば戻るほど、ボールを奪っても攻撃の糸口がねぇんだよ・・・。こいつら、下手クソだから頼りねぇかも知れねぇけど・・・ どうだい、キャプテンとしてこいつらを信じてみるってのは・・・。こいつら、絶対守ってくれるから、こいつら信じて前線でさぼっててくれねぇかな・・・。まぁ、キャプテンっつっても生意気なクソちびだけど、やっぱこいつがいねぇとうちは攻撃できねぇだろ。みんなもどうだい・・・北斗に、攻撃に力を残してやりたいんだが、さぼらしてもいいかな・・・北斗・・・仲間を信じるのもキャプテンの仕事だよ・・・みんな・・・頼む』

作戦とは言えない、ただこいつらの力を最大限に引き出してあげたい、そんな私の願いを、みんなは笑顔で頷いた。『北斗!!戻るな我慢しろ!!今に必ずリズムが作れるから!!待ってろ!!信じてサボってろ!!』このどうしようもないハーフタイムの指示は、なぜか彼らをまたひとつにさせた。

必死にボールを奪い、やっとの思いで前線に繋げる。また奪われては戻り、ひたすら前線に・・・何度も何度も引っ掛かってはまた奪う・・・ゴールを奪えない前線は、守備陣の必死さに胸を苦しめ戻りそうになる・・・『堪えろ!!』『かならず繋ぐから、待ってろ!!』『互いに信じよう!!』『かならず勝って帰ってこいよ!!』『かならず勝って戻るから!!』 

試合に出れない控えの選手からも・・・フェンス越しで応援する後輩達、サポータ・・・そんな目と目のやりとりを・・・苦しさをともに乗り越えてきた仲間の心と心が・・・ひとつになったとき・・・朋彦が再三果敢に挑んだ右サイドから低く鋭いボールが入った・・・ゴール前を横一線風が吹き抜けようとした瞬間・・・左から入ってきた閃光が その横風ごとゴールネットに突き刺した・・・光。すべての想いがゴールを生んだ・・・   

一生懸命拾い、大事に繋ぎ、力強く運ぶ、そしてなだれ込むように身体ごとゴールに押し込む・・・1点目と同じように、仲間の力で振り絞った渾身のゴールでした。

Published on 2012.05.28 at 20:38 by Sendai FC Staff

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